脳トレだけでなく暮らし全体で考える認知症予防
認知症予防と聞くと、計算ドリルや漢字パズル、間違い探しなどの「脳トレ」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、頭を使うことは良いことです。楽しみながら続けられるなら、日々の張り合いにもなります。
ただ、認知症予防を「脳トレだけ」と考えてしまうのは、少しもったいないことです。
脳は、脳だけで元気を保っているわけではないからです。
脳の健康には、体の健康、心の健康、そして人とのつながりが深く関係しています。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などは血管に負担をかけ、脳梗塞だけでなく認知機能の低下にも関わります。足腰が弱ると外出の機会が減ります。睡眠が乱れると、昼間に活動する元気も出にくくなります。
意外に大切なのが「耳」と「歯」
意外に大切なのが「耳」と「歯」です。聞こえづらさがあると会話に入るのがおっくうになり、人との交流が減ってしまうことがあります。補聴器に抵抗がある方もいますが、必要に応じて聞こえを補うことは、会話を楽しみ、脳に刺激を届ける助けになります。歯の健康も同じです。しっかり噛めることは食事の楽しみにつながり、栄養を保ち、人と食卓を囲む意欲を支えてくれます。
つまり、認知症予防とは「脳を鍛えること」ではありません。
大切なのは、体と心、人とのつながりを含めて、暮らし全体で脳の健康を支えるという考え方です。
毎日の経験が育てる脳の貯金
加齢や病気により脳に変化が起きても、これまでの経験や知識などを生かして認知機能を保つ力を「認知予備能」と言います。
やわらかく言えば、「脳の貯金」のようなものです。この脳の貯金は、勉強だけで増えるものではありません。
今日歩いた道、友人との会話、畑仕事、料理、買い物、自治会での役割。
こうした日々の活動も、脳にとって大切な刺激になります。
認知予備能を高めておくことで、認知症の症状が出にくくなったり、出る時期を遅らせたりする助けになると考えられています。
今日から始める3つの小さな習慣
①一日一回、外に出る
ー散歩や買い物など、外の空気を吸い、季節を感じましょう。
②誰かと一言多く話す
ー家族や友人、ご近所さんなど、積極的に会話を楽しみましょう。
③いつもより10分多く歩く
ーいつもの生活にプラス10分の歩行で、体も心もリフレッシュ!
無理なく自分らしく
もちろん、これをすれば絶対に認知症にならない、という魔法の方法ではありません。
年齢や体質など、自分ではどうしようもないこともあります。
それでも、脳に良い生活を意識することは、転倒、寝たきり、うつ、生活習慣病の予防にもつながり、体と心の健康を支えてくれます。
脳トレだけが認知症予防ではありません。普段の生活の中で頭と体を使い、人とつながる機会を保つこと。それが、自分らしく暮らし続けるために、無理なく続けられる認知症予防です。
コラムの執筆者
理事⻑ 金井重人
・資格
日本精神神経学会専門医/医学 博士/認知症サポート医
・専門分野
精神医学全般/うつ病/認知症


